Tour du Mont Blanc
登山を始めてちょうど 10 年の節目に、初めての海外進出の舞台として選んだのはヨーロッパのアルプス山脈、その最高峰・モンブランの周りを巡るツール・ド・モンブラン(Tour du Mont Blanc: TMB)。
トレッキングを通していくつもの峠を越え、フランス・イタリア・スイスの三国を巡る。
現地に行くまでは期待と不安が入り混じる中、実際に歩き始めて見れば息を呑む絶景や未知の体験の連続に終始感動していた。
間違いなく、ここまでの登山人生 10 年分の集大成と言える大一番の山旅となった。

日本から丸一日かけて移動し、フランスのシャモニーに到着。
高い山に囲まれた谷間にある山岳リゾート地。登山文化の発祥の地ともされる。

シャモニーで1泊し、現地入り翌日がトレッキング初日。
Les Houches(レ・ズーシュ)まで送迎車で移動すると、ツールドモンブランのスタートゲートがある。
ここは記念撮影のためだけに立ち寄り、今回のツアーハイキングの起点はまださらに少し先となる。
ちなみにゴールゲートはないそう(TMB は一周のトレイルなので、スタートゲートに戻ってくることがすなわちゴールだからか)

レ・ズーシュからロープウェイを使ってベルビュー(Bellevue)へ。
ここがトレッキングのスタート地点となる。TMB のスタートゲートからはだいぶ進んだところで、いきなり楽させてもらった。

エギーユ・デ・ビオナセイ(Auigille de Binnaossay: 4052m)あたりの山頂部が少しだけ見えた。
上部は氷河に覆われている。

初日の宿泊地はミアージュ小屋(Refuge de Miage)。
Col de Tricot を越えた先の長閑な平坦地に位置する小屋。
ここからは小屋の名前の由来にもなっているだろうドーム・ド・ミアージュ(Dômes de Miage: 3,673m)が正面に見える。

写真は飛んで2日目の昼。
朝、ミアージュ小屋を発った時は小雨が降っていたが、好転した。

一面に広がるお花畑に癒されながら、ボンノム峠(Col du Bonhomme: 2,329m)に向けてゆるやかに標高を上げていく。

谷を振り返って。
右の高峰はおそらくモン・トンドゥ(Mont Tondu: 3,196m)。
日本の第二の高峰・北岳(3,193m)よりも高い。

2日目の宿はボンノム小屋(Refuge de la Corix du Bonhomme)。
ちなみにこの写真の明るさで時刻は 20:00 を回っている。日本の夏よりも昼が長い。

小屋から眺める隣の小高い山。
テント場がかなり自由で、小屋の周辺の広大で緩やかなところに点々とテントが張られていた。

右奥の冠雪した山はモン・プリ(Mont Pourri: 3,779m)。
日本の最高峰・富士山よりもわずかに高い。

3日目は、強風のガスの中を歩き始める。
アイベックスの群れと出会うことができた。

この日は、谷間にある小さな村La Ville des Glaciers に向けて美しいカール地形を下っていく。

本日の宿、モッテ小屋(Refuse des Mottets)が見えた。
エギーユ・デ・グラシエ(Aiguille des Glaciers: 3,815m)の山体が大きい。

馬が飼われている。他にも豚や鶏、牛など、さまざまな家畜が飼われていた。

ランチタイムには今日の宿に着いてしまったので、外のテラスで昼食。
生ハムと卵のクレープは絶品だった。

時間がたっぷりあるので、小屋の周辺をじっくりと散歩。
放牧された牛が、不思議そうにこちらを見ている。
野生のマーモットにも出会うことができた。

4日目、モッテ小屋から標高を上げ、フランスとイタリアの国境であるセーニュ峠(Col de la Seigne: 2,516m)を目指す。
途中、家畜のヤギの群れが登山道脇に集結しており、多くのハイカーが立ち止まって癒されていた。
放牧犬らしき犬も一緒にいて、仔ヤギがじゃれて踏んだりしていて可愛かった。

強風が吹き荒れるセーニュ峠に立ち、いよいよここからイタリアになる。
ハイカーとすれ違う際の挨拶も、フランス語の「Bonjour」からイタリア語の「Bonjourno」に変わる。

イタリア側に出ると、また大きく風景が変わった。
モンブラン山塊の鋭い針峰群を左手に、開放的なトレイルをゆっくりと進む。

TMB(Tour du Mont Blanc)のルートであることを示す表示。
真ん中のプレートが外されて、矢印だけになっているところもあった。

氷河が作った湖・コンバル湖全景。
これまでとはまた違った雰囲気で、日本の場所に例えるなら尾瀬のようなところだった。

モンブラン山塊・TMB は、イタリア・フランス・スイス 3 つの国境を跨ぐように位置する。
いま立っている場所はイタリアだ。

4日目の宿は、スキー場内にある小屋メゾン・ヴィエイユ(Rifugio Maison Vieille: 1,956m)。
イタリアに入って最初の宿泊地で、さっそくイタリアンを堪能することができた。
もちろんフランスで食べた料理も美味しいが、やはりイタリア料理は馴染みがあって特に美味しい。

5日目。メゾン・ヴィエイユからクールマイユールに下りる。ロープウェイを使った。
この日からガイドが交代し、昨日までの男性イタリア人ガイドの幼馴染という女性のイタリア人ガイドになった。

クールマイユールはシャモニーの反対側にあるイタリアの町。
シャモニーより小さな町だが、観光地として開発されており、こちらも景観が非常に美しい。

この日はクールマイユールから一度尾根に上がり、ベルトーネ小屋(Rifugio Bertone)でランチを楽しんで、山々のパノラマを楽しんでからグランドジョラス山麓のキャンプ場からバスでクールマイユールに戻るプラン。
翌朝は、今日バスに乗る地点あたりまでクールマイユールからバスで向かい、そこから続きを歩くという、ツアーならではの立ち回り。

爽やかな青空の下、ベルトーネ小屋でランチを楽しんだら、いよいよここからはモンブランを目の前に見ながらのハイキング。
5日目にして、ついにモンブランの頂上付近が顔を出した。圧倒的迫力。

写真中央の、雲が頂上部分にかかった山がモンブランと連なるグランドジョラス。
4,000m 級の山々が、屏風のように視界を埋め尽くす。
日本でいう、北アルプスの穂高岳・槍ヶ岳の連なりを眺めながら常念山脈を歩くような感じ。
あれを大幅にスケールアップさせたような風景が広がる。

大パノラマの尾根道は続くが、今日はこのあたりで標高を下げ、谷へと下る。
下ったところからバスに乗ってクールマイユールへと戻り、5日目のハイキングは終了。

クールマイユールに戻ってきた。
市街地からでもモンブラン山塊の絶景を望むことができる。
美しい街並みと相まって、幻想郷のようだった。
今回はクールマイユールを観光する時間がほとんど取れないのが惜しい。

翌日6日目、クールマイユールからバスで昨日と逆ルートを辿り、昨日の続きを歩く。
しばらく樹林帯を登るが、ボナッティ小屋(Rifugio Bonatti)のあたりで視界が開け、またあの絶景と出会えた。
この日は今までの日程のなかでは特に天気がピカイチで、雲一つない快晴となった。
昨日ギリギリ雲がかかっていたグランドジョラスも、頂上までバッチリ見える。

モンブランもこのとおり。白く光り輝いて見える。
ヨーロッパのアルプスに来たんだと改めて実感する風景。

こんな景色をずっと眺めながらのハイキングなので、感覚が麻痺してくる。

この日の宿は、エレナ小屋(Rifugio Elena)。
奥に見える高峰はモンドラン(Mont Dolent: 3,823m)で、イタリア・スイス・フランスの三国国境に位置する。

7日目、いよいよ旅の終わりが近づいてきた。
この日はエレナ小屋(写真左下)を出発して、大フェレ峠(Grand Col Ferret: 2,537m)でスイスに突入する。
イタリアを離れるのが少し寂しかった。

大フェレ峠にて。ここからスイスとなる。「S」は Switzerland の頭文字。

大フェレ峠からは緩やかに標高を下げ、Ferret や La Fouly の村へと向かっていく。
この日の天気は下り坂で、徐々に厚い雲に覆われていった。
天候の悪化と関係あるのかは不明だが、今まであまり出会えなかったマーモットがあちこちで顔を出していた。
写真は牛である。

TMB はルート上に野生のブルーベリーや野いちごが実っており、見つけるたびにガイドが教えてくれた。
それをみんなで数粒取って食べるのだが、これが甘酸っぱくて美味しい。歩きながら、ささやかな楽しみのひとつだった。

昼頃、スイスの小さな村、La Fouly に到着。冬はスキーリゾート。
この小さなスーパーとレストランが合体したような施設が今日の宿泊施設だ。
このあと屋内で昼食を食べている間、まとまった雨が降った。
7日目まで結局行動中の雨はほとんどなく、かなりラッキーだったなと改めて思う。

8日目、いよいよ TMB トレッキング最終日。
この日は泊まった La Fouly から送迎車に 1 時間ほど乗って、一気に Trient まで。
ここから歩き始め、バルム峠(Col de Balme: 2,191m)でフランス国境を跨いで、シャモニーに戻って終了だ。

Trient も静かで美しい村だった。
ここでアプリコット農家のおじさんが急に出てきて、自分たちに数粒分けてくれた。
とても気さくな方で記念撮影までしてくれた。もらったアプリコットもみずみずしくておいしい。

バルム峠は赤い窓がトレードマークの山小屋で、ここを越えると再びフランスとなる。
その先はシャモニー谷だ。

シャモニーまでは歩かず、手前の Le Tour でトレッキングは終了。ここからバスでシャモニーへ帰還。
まずは何より最高の天気に恵まれた8日間だった。
想像以上の絶景はもちろん、イタリア人のガイドと、つたない英語(向こうはとても手加減して喋ってくれている)でどうにかコミュニケーションを取るといった体験も新鮮でよかった。数日間自分たちを案内してくれた、そんなガイドとの別れも切ないものだった。
山はいい、旅はいい。またいつかこの地を訪れたいと心から思った。