南伊豆歩道
新緑が深まり、穏やかに吹く海風に初夏の気配を感じる南伊豆へ。
喧騒を逃れたゴールデンウィークの狭間、海沿いの静かな道を辿る。
南伊豆町・下賀茂を出発し、石廊崎を経て松崎町まで海岸線を北上。最後は内陸の県道を通って、再び南伊豆へと戻る周回ルート。
この道の魅力は、目を奪うような断崖絶壁の景観。
そして、海岸線に点在する小さな集落を訪ねるたびに出会う、それぞれに異なる暮らしの風景。
豊かな自然に囲まれた厳しい土地で、工夫を重ねて営まれる人々の生活。その姿に触れることを通して、南伊豆の奥深さを五感で感じる旅となった。

南伊豆町の中心市街地(下賀茂地区)にある道の駅に車を停めた。
朝のやわらかな日差しと海風を浴びながら、ゆったりとしたペースで走りながら最南端・石廊崎を目指す。

海沿いの開放的な道を進む。

石廊崎灯台に着いた。まだ朝で誰もいない。
ここまでスタート地点から 10km 少々。

伊豆半島最南端、石廊崎の先端に立ったところからの眺め。
断崖絶壁に張り付くような新緑と、穏やかな青い海。

石廊崎を離れ、そこから西伊豆方面へと向かう。まだしばしロード。

中木と入間の集落の間を結ぶ細いトレイルを進む。
南伊豆歩道は、海岸沿いに点在する集落を順につなぐ道となっており、人里が近い安心感がある。

トレイルのすぐ脇は切れ落ちた断崖で、その先は海。
南伊豆歩道ならではの風景。

一番気持ちよかった区間。山と海だけの誰もいない場所。
正面の奥に、この先にたどり着く吉田海岸が見える。

吉田海岸。国道から切り離された場所にある秘境。
十数軒の家屋が並ぶ小さな集落となっている。

吉田海岸から再びトレイルを抜けると、妻良の集落に出た。
ここは国道沿いにある比較的賑やかな地域。

妻良から子浦と辿り、この旅のハイライトのひとつである崖の上に比較的平坦で小さな草原が広がる場所に出た。
ここで眺める夕日はきっと美しいことだろう。左奥にある町並みが先ほど通った妻良の集落。

伊浜地区に出た。
ここも国道から隔離され、透き通った海の穏やかな海岸に抱かれた静かな集落。

伊浜の住宅地の入り組んだ路地を抜けていく。

伊浜から松崎町の雲見にかけては高通山に登るのが本来のルートだが、このあたりでゴール時間および帰宅時間をを逆算して、ここは国道経由で時短することに。

松崎町雲見。小さな温泉街。

雲見から岩地を結ぶ山道は三浦歩道という名が付いている。ここは「伊豆石」とよばれる良質な石が取れることが古くから知られ、江戸城の築城のための石を切り出す場所として使われていたそうな。
その跡が今もはっきりと残っている。

とにかく海が青く美しい。
故郷である静岡市の海岸で見る海と同じ駿河湾の海なのにかなり違う。

そしてついに松崎町の中心市街地が見えた。これまで順に辿ってきた里がいずれも小さな集落だったので、大都会に出たように錯覚する。

松崎町が、南伊豆ロングトレイルとしてはゴール地点になる。
そこからは、車を置いた南伊豆町下賀茂まで、県道 121 号を辿って 20km 以上の道のりを走って戻る。

夕焼けを楽しんだりしながら長閑な田舎道を経て、すっかり日が落ちたあと下賀茂に戻り着いた。実に 80km に及ぶ道のり。
トレイルとロードが半々か、ロードのほうが少し多いくらいの行程であったが、変化に富んだ南伊豆の風景を存分に楽しめた。