笹山・伝付峠
南アルプスの白根南嶺を、笹山から入って伝付峠まで歩いてきた。
5年前に下った笹山ダイレクト尾根を、今回は登りで使う。長すぎる単調な登りは己の精神との闘い。笹山以降は誰ともすれ違うことなく静かな山を歩き、奈良田越で幕営して夜半強まる風を凌ぐ。
2日目は笊ヶ岳を目指す予定も、想定外に降り続く雨に負けて、今回は伝付峠にて志半ばで下山の判断。しかし伝付峠から新倉への下山路も侮れない。不明瞭な沢沿いのルートで繰り返される渡渉と、ロープの張られた急坂に打ちのめされ、なんとか下山。
白根南嶺の厳しくも美しい自然に、身体は痛めつけられ、しかし心は癒された山旅となった。
奈良田から笹山ダイレクト尾根をひたすら登る。
しばらくかかっていたガスを抜け、森の中にうっすら立ち込める霧に日差しが入る。
長い尾根を登り切り、笹山南峰の頂上へ到着。
突き抜けるような青い空が広がっていた。秋の雲が一層くっきり白く輝いて見える。
休憩がてら、より展望のいい笹山北峰へ散歩。
笹山北峰は360度ひらけた大展望の山。
笹山ダイレクト尾根は視界が開けるポイントがないだけに、この景色に出会えた喜びはひとしお。
笹山北峰からは、白根南嶺の北部へとつながる稜線もすべて見える。
5年前に北岳からこちら側に向かって歩いてきた道。
そして目指す笊ヶ岳。結局、今回は登頂が叶わなかったが。
振り返ると、先ほどまで立っていた笹山の頂上が見上げる高さにある。
奈良田越を目指す。
木々が激しく揺れ、風が強まっているのがわかる。
奈良田越にて幕営。
日没には間に合った。標高1980mまで下げてきたので、涼しいくらいのちょうどいい気温。風も凌げる。
2日目、予想を反して本降りの雨。止む気配がないので、雨の中濡れたテントを撤収して歩き始める。
伝付峠に差し掛かっても結局雨が止む気配はなく、水場でわずかに電波が入ったので予報を見ると今日は夕方までこんな天気とのこと。これではいろいろと期待できないので下山の判断をした。
丸太一本の橋。見た目より歩きやすい。
新倉への下山路は、カラマツと笹の道が終わると大きな岩がゴロゴロした沢沿いの道に変わる。この道は不明瞭だったり、渡渉があったりして気を遣う。
両側が切れ落ちたザレ気味の急坂。ハシゴとロープに身を任せて慎重に下る。この先も注意箇所が多い。
予定外の下山、そして新倉への道は想像以上の難路であったが、やはり南アルプスは厳しくも美しい、素晴らしい場所だった。
笊ヶ岳はまたリベンジしようと語りながら、来年に思いを馳せて帰路についた。